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ミニマリスト見習いの、よくばりジャーナル

最後の同期

こんにちは、ミオグロビンです。

去年の9月30日、同期が一人、会社を辞めました。
私以外に残っている最後の同期でした。

不思議な人でした。

正直に言うと、私は彼女を苦手だと思っていて、
入社後初めての面談の時に、社内で苦手な人を聞かれて私はその人の名前を挙げています。

外面が良く、自分を明るく元気に見せようとして、はきはきしゃべる姿を見るとなんだか息苦しかった。
言葉は悪いですが、胡散臭い人だなあ、と思っていました。

一度だけ二人で飲みに行ったこともありましたが、本音が見えず、いつも何を話したらいいのかわからなかった。
年も近く入社時期も近かったですが、あまり親しくはなりませんでした。
無理に仲良くなろうとはせず、適度な距離感を保ってやっていければいいと思っていました。
苦手でしたが、仲を悪くしたいわけでもなく、そんな理由もなかったので。

私は入社してしばらくして別の事務所で働くことになり、彼女がいる本社には月に1回顔を出すくらいに。
たまにしか会わなかったのですが、少しずつ彼女の元気がなくなっていって、
ある日彼女は突然座り込み、泣き出し、休職することになりました。

私は彼女に課せられている仕事のノルマが彼女にとって重いか、
あるいは仕事内容がそもそも彼女の素質には合っていなかったために
彼女は心を病んでしまったんだと思いました。

彼女はしばらく休んでから別の部署で復帰することになり、
私はその後、それまでに彼女に何が起きたのかを人づてに聞きました。

要は、彼女はずっと仕事をしていなかったのだそうです。
いかにも仕事をしているかのように振舞いつつ、でもその実ほとんど仕事らしい仕事はしていなかった。

それを聞いて、なんだかいろいろなことが合点がいきました。
彼女の業績が振るわなかったわけ、私が彼女に感じていた胡散臭さ、などなど。

それと同時に、湧きおこる疑問の数々。

病むくらいなら、仕事をすればよかったのに。
私は、病むくらいだったら腹をくくってちゃんとやるべき仕事をするほうが、トータルで考えると楽だと思うのです。
なんで彼女は、そこまでして仕事することができなかったのか。

そもそも、どうして病んだのか。
仕事をしたくなくて、仕事をしなかった結果、病むっていうのはなんだか奇妙だと感じるのです。
彼女が仕事を「したくなかった」のだとしたら、彼女は彼女の希望をかなえました。
それで結果として、どうして病むのか。

そもそも、理解しようとするのも無理なことなのかもしれません。
どうやったって分かり合えない人もいる。
私の知らない精神疾患だって、世の中にたくさんある。
彼女はその一つなのかもしれない。

彼女は復帰後、別の部署でもやはり仕事をせず、退職することになりました。
どういう形での退職なのかは、私は知りません。知る必要もないことです。
会社と彼女の関係は、お互いにもうどうしようもなかったのでしょう。

ただ、彼女が復帰後も仕事をしていないことを、別の事務所にいる私はあまり知らなかったので
退職の知らせはとても突然で、それは驚きました。
でも私の驚きとは裏腹に、社内のほかのメンバーはとても落ち着いていて静かに見えて
私が本社に顔を出さない間に何かあっただろうことは、極めて明白でした。

彼女が退職をしたのは上半期末の9月30日ですが、
私は彼女から「9月半ばに結婚することになりました!」と8月の下旬に報告を受けていました。
結婚に伴う特別休暇の取得方法を私に聞く彼女に対して、
私は「この状況で特別休暇を申請しようとする度胸がすごいな・・・」と複雑な気持ちでした。
もちろん社員である限りは、特別休暇も取得する権利はありますので、私が口をはさむことではありません。
私は、私の場合どのように取得したのか、もちろんその手続きを彼女に教えました。
彼女は「来年の3月くらいに、特別休暇を取る予定です」と言っていました。

9月半ば、彼女は本当に結婚したのでしょうか?
もししていたとしたら・・・結婚して間もなくの急な退職を、彼女はパートナーにどのように伝えたのでしょうか。
私の予想では、彼女のことだから、パートナーには退職になったことを言わずに、しばらくエア出勤をしていたのではないかと思いますが・・・
そもそも、パートナーは、彼女が仕事をしていないことを知っていたのでしょうか。

私の人生にはミリも関係のない話で、言うなればただの下衆の勘繰りですが、なんかふと考えてしまうことがあるのです。

同期の中で、彼女と私が残った時点で、今後社内では私たちはいろいろと比較されることになるのだと覚悟しました。
しかしながら、彼女と私が残った時点で、彼女が仕事をしないことは一部の人の知るところだったので
私は今どのように思われているのだろう、とちょっと気がかりなのです。
年が近いから、入社時期が近いから、同期だから、私も仕事をしていないかもしれないと思われる可能性は十分にある。
なので私は「お願いだから、彼女とは一緒にしてくれるな。どうか比べてくれるな」と思わずにはいられない。


そういえば、彼女は飲み会で店員さんの代わりにオーダーを集めたりと気を回すのがうまく
そういうことが下手な私は、彼女をすごいなあと思っていました。
彼女が場をちゃきちゃき回した飲み会の後に、上長が彼女に感心しきって、「ありがとう」と抱擁を交わしていたのをよく覚えています。(※どちらも女性)
その時の彼女はとても安心したような表情をしていて、嬉しそうでした。
意地悪な見方をすれば、「信用を勝ち取ったので、もうしばらくはごまかせそうだ」という安堵感だったのかもしれません。

私も彼女と一緒に頑張って場を回していたあるとき、場から「生ビール2杯、レモンサワー1杯」の注文が入ったのを
彼女は店員さんに「生ビール3杯、レモンサワー2杯」と伝えたことがありました。
数が違う、とまごまごする私に対して、彼女は「そのうちだれかが飲むんだから、こういうのは多めに言っておくものなんです。」とドヤ顔で言いました。
案の定、多めに頼まれた生ビールとレモンサワーは行き場をなくして、私は途方に暮れましたが・・・
かわいそうな、生ビールとレモンサワーと、私。
生ビールとレモンサワーが行き場を失っていることに対して、彼女はお構いなしでした。
(レモンサワーは氷が入っているけど、生ビールって、たぶん来たばっかりの冷たいもののほうがおいしいよね・・・?)
飲み会の場を回すのが下手な私には言われたくない、と彼女はきっと思うでしょうが、ちょっとこのやり方はどうか、と思いました。
でも、タイムリーに生ビールとレモンサワーの追加注文が入ることもあるだろうから、そういう時に彼女は「やっぱり私は正しい」と思うのでしょう。
何事も、常に正しいことなんてないですね、「うまくいくことが多い手法」があるだけで。


不思議な人でした。